チューリッヒ・トーンハレシリーズ Literatur und Musik の一環として、3月26日日本を代表する作曲家、細川俊夫氏の室内楽作品が特集されました。演奏会後にはJCZのご厚意で細川氏を囲む懇談会が催され、作品に関してや日欧での音楽受容の違いなどについて興味深いお話を聞くことができました。取り上げられたのは全て何かしら日本と関係のあるタイトルの作品でしたが、音楽自体は日本民謡に基づいたものから前衛的な作品まで幅広いスペクトルを示していました。アルトフルートの作品では尺八音楽を連想した聞き手が多かったのですが、細川氏はこの作品は決して尺八の音色を模倣したものではないと解説されました。また、打楽器作品ではスイス人の奏者が声で合の手を入れるタイミングが謡曲を思わせる絶妙なもので、さぞかし練習を積まれたのでしょうねと伺ったところ、微笑されて、ご自身は全くリハーサルに立ち会っていないとのお答えでした。私の知る限り、氏の楽譜は複雑な楽曲でも五線譜に学校で習うような標準的な記号だけを用いて書かれているのですが、氏のお答えからは「非ヨーロッパ的なニュアンスの音楽も十分に五線譜で表現できる」という強い自信を感じたのでした。6月にはルツェルンで、先日ベルリンフィルで初演された氏のヴァイオリン協奏曲が上演されるそうです。(石川尚)