Special Interview @Wiler Japanfest 江戸太神楽:曲芸師 仙若さん

Special Interview @Wiler Japanfest 江戸太神楽:曲芸師 仙若さん

去る9月7日、ザンクトガレンのWilで開催されたJapanfestの盆踊りにボランティアで参加!若いお嬢さん方に混じって、伝統芸能愛好会の方に浴衣を着付けて頂きました。や~、帯の結び方、すっかり忘れてた… そして皆で踊ると、もう気分は「ニッポンの夏!」汗だくで踊りまくりました。見物客の皆様も温かい眼差しで、さすが Wil。ふと脇を見ると、特別ゲストの江戸太神楽・曲芸師「仙若」さんがお客様を巻き込んで、芸を惜しげもなく披露しているではないですか! その素晴らしいコミュニケーション術には、芸を楽しんで頂こうと日々精進されている仙若さんの生き方が滲み出ていました。
そこでスイスで演じられたご感想を伺ってみました。

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この度、ご縁を頂き26年ぶりにスイスへ参りました。7日の午後は翌日のお祭りの宣伝も兼ね、快晴の盆踊りデモンストレーションとなりました。そこでは居合いを学ぶ現地の皆さんのデモンストレーションもありました。私の芸能はそちらの分野ですのでテンションも上がり、参加予定ではなかった私まで自己申告で参加させて頂き、めちゃくちゃ楽しい時間をご一緒させて頂きました。
 皆さんが浴衣に着替えられ、街中を歩く姿や、居合いの皆さんがキリリと演舞をなさるお姿も見て、もう何とも言えず日本人として心から嬉しく、また自分も襟を正してしっかりやらなければ、と、実はプレッシャーも感じました。実際のデモンストレーションの時は、以外にも通行人の方々がフレンドリーに接して下さり、お陰様で私も少し曲芸も披露させて頂き、宣伝と共に現地の皆さんとのスキンシップを楽しませて頂きました。
 デモンストレーションを終え、イベント会場へ戻り、自然な流れで懇親会へと移りました。スイス在住の皆さんの明るくてお元気な事!皆さんがいかにアグレッシブにご活躍かを知り、楽しく笑顔で盆踊りの事や様々な情報交換をなさる様子を見ながら、今回、私がここに来る事ができたのは、主催の敦子さんやクリストフさんのご尽力は勿論の事ながら、そこにご協力を下さり日本文化を通じて和を作ろうとなさる皆さんがいらっしゃるからこそだ!と、強く、強く、実感し、感謝を致しました。

8日は各出店の皆さんも入られ開場。みるみるうちに会場には人が溢れ、歩くのもままならない状況になりました。

自分の準備をしながら、時間をさき、各店舗を覗きました。驚いたのは、それぞれのお店さんのバラエティーさと質の高さです。焼き鳥やお好み焼きに始まり、から揚げ、コロッケ、お寿司、オリジナルの日本酒にビール、あんまんや今川焼、かき氷、お面や様々なバルーン、様々な雑貨や本場の群馬県高崎から取り寄せられた達磨に、日本でもなかなかお目に掛かれない様々な折り紙の実演から体験まで、本当に、質の高い日本のお祭りがそこにありました。私は自分の準備もあり、楽屋近くのコロッケや巻き寿司をお昼に頂きましたが、本当に、衣が薄く中身はふわふわボリュームたっぷりのコロッケは絶品で、巻き寿司もお醤油に山葵を付け、本番前にもかかわらずお腹一杯食べてしまいました。また、雑貨屋さんでは、風呂敷を更に使いやすくアレンジして販売されている逸品を見つけ、持ち運びに苦労していた道具に試着してみますと驚く程ピッタリ!日本でも出会えなかった雑貨に出会い、思わず即買いしてしまいました。

太神楽のステージでは、在住でご活躍の竹下数雄さんの日本の様々な歌のご披露にはじまり、和太鼓や盆踊り、武道の実演など、どのステージもご参加者のこれまでの真摯な取り組みや、またそれを応援なさる皆さんのあたたかい空気に包まれ進行していきました。そして第一回目の太神楽の出番。直前まで問題なかったはずの持ち込みのヘッドセットマイクがトラブルで、音が入らなくなってしまい、一瞬焦りましたが、そもそも、スイスドイツ語も話せず、英語も超ブロークンな私。芸自体も見てお楽しみ頂ける部分も大きいのでとにかく気持ちを込めて演じる事に務めました。太神楽という芸能の面白い所は、あくまで個人的な意見ですが、「技術を見せる」事ではなく、「技術をお楽しみ頂きながら、そこに”神楽”らしく人々の思いを乗せ、一緒にお楽しみ頂く事」ではないかと感じています。日本では言葉が通じ、またその言葉の力があるので、声に発すればそれは伝わるのですが、そうでない時はさすがに少し焦りますが、焦らない胆力が、やはり大切なのかと、今回改めて強く実感致しました。
 2回目の公演でも、やはり持ち込みのマイクは復活しませんでしたが、音響さんが細かい対応を下さり、お陰様で何とかお客様ともコミュニケーションを取らせて頂きながら、曲芸を務めさせて頂きました。また少なからず、太神楽はお祝いの意味合いの強い芸なのですが、今回は何と言いましてもスイスと日本の国交160周年、そして主催の「日瑞文化協会やまと」さんの10周年でしたので、自然と気持ちも曲芸に乗っかり、お祝いの気持ち満載で拙いながら芸を務めさせて頂きました。それもある意味、これまで太神楽が継承される中で、先人の方々が磨いて下さった所謂伝統芸能自体の力の賜だと強く実感も致しました。
 仕事以外では、やはりスイスのチーズは絶品でした!どこの食事でもチーズが入っているメニューを選びました(笑)
 私は日本の花火が大好きです。世界中に様々な花火があり、勿論それぞれに美しいのですが、なぜでしょうか、日本の花火に一番気持ちが吸い寄せられます。まるで人生そのもののように、美しさの中に儚さもあり、一瞬の花火をいつまでも見ていたいと思ってしまいます。日本人の何か根本にある感性が表現されているからなのでしょうか。今回のお祭りの中にも日本の花火のような愛おしさを感じました。
このお祭りが、一年でも長く続き、皆さんのお心にあたたかい光を与えて下さいますことを心から願っています。また私自身も各所での公演で、少しでも何か観客の皆さんに楽しい思いを、光を灯せますよう頑張っていきたいと思います。

江戸太神楽 仙若オフィシャルウェブサイト https://senwaka.wixsite.com/home